「そんなに、死にたいのですか?」
その声は、僕の知らない言語で、もう一度訊いた。
得体の知れない質問者の存在に、僕は無意識に身震いをする。
腰掛けていた、礼拝者のために整然と並べられた長椅子から立ち上がり、
音も無くゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、誰もいない。
誰も?
そう、誰も――…
「いまさら、」
また、声が反響する。
僕の、近くで。
「私が誰か、だなんて…馬鹿げていますよね」
一瞬の、思考の停止。
そう。
そうだった。
僕は、私。
私は、僕。
「…案外遅かったですね」
声はそう一言おいてから、僕の影のなかから答えた。
もう一度、闇が揺らめく。
「私は、もう懲り懲りですよ」
そう言って、影が独り言をはじめた。
「…あなたに殺されてばかりだから」
「殺される? 僕に?」
「ええ。」
含み笑いをした声が響く。
「私はね」
声が続ける。
「それよりも…死ぬことよりもね。特別なことに興味があるんですよ」
「それは、何だい?」
四角く抜け落ちた天井から伸びる光の後ろで。
「あなたを殺したくって、ね」
嘲った
誰かが、すぐそばで
すぐにぼくは身をひそめた
つめたい海の底
嘲った
今度は、もっと近くで
そっとゆっくりぼくは身を乗り出して
「 」
叫んだ
くすくすくすくす
ぼくを嘲笑ったのは
ドッペル
ぼくだったのか。
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