なかなか外の豪雨は降り止む気が無いようで、瞬く間に容赦なく灰色の街を飲み込んでいく。
この街で唯一崩れていない建物が、この聖グレイス教会だった。
とはいっても、やけに高い天井には数箇所目立つヒビがあるし、色鮮やかなステンドグラスは
原型をとどめずに抜け落ちていた。
時折、どこかでモノが壊れる音がした。
その度に驚いている僕とは反対にアグリは怖いくらいに落ち着いていて、僕を宥める。
僕もそれに倣うと、いつのまにか慣れた。
教会内に整然と並べられたイスには、長い間使われていないのかホコリが溜まり白くなっている。
長い間?
いつから使われていなかったのだろう。
相当な時間をかけてホコリが積もったはずだ。
ぐるりと一周すると、また彼女の前に戻ってきた。
「ねえ、アグリ。キミはいつから此処にいるの?」
「――分らないわ。気がついたら、閉じ込められていたの」
「そう」
やはり納得がいかない。
「――それって、」
言葉を区切ってから、彼女が言う。
「――アナタが、いつからこの世界にいたのか、訊いているのと、同じだわ」
「なるほど、ね」
「――アタシやアナタが、生きているのは、」
「生きようと望んでしまったから、かな」
「――そう」
人と居る、ということに、慣れてしまっている。
僕がそこに居る、ということにも。
呼吸をするように、口許を吊り上げることも。
僕は、そうすることは、苦じゃなかった。
でも君は違った。
気付いてほしかったんだろ。
見ていてほしかったんだろ。
そうしているところを、見せたいんだろ。
だから僕は、目を逸らしていた。
僕は助けがほしいわけじゃない。
差し伸ばされる手を、待っているわけでもない。
それはただの、誰かが観た夢。
堕ちる途中で、囁かれた。
思考の沸点を超えた、言語で。
それはいつも、存在する「なにか」。
それにだれか、理由を付けてった。
僕はいつも、堕ちてゆく「人間」。
そこでだれか、定義してった。
スピード、上げすぎ、失速。
余計に、見えずに、墜落。
最初から、知ってた、不時着。
そのとき、聴こえた、共鳴。
死の間際、僕は生きていた。
生きている僕だけが、僕を殺すことができた。
生きようとした時、
僕が死んでいたのと同じように。
「そんなに死にたいのですか?」
誰かの声が、聞こえた。
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